けいせん
機体の組み立てを行うスペースから少し歩いたところには、土手から見えた機体が並んでいた。 「あれは、ゼロ戦?」 緑色のプロペラ機には大きく日の丸が描かれている。 土井さんが以前話していた、昔の飛行機をLUPで再現したタイプだろうか。 「いや、ありゃ…
俺と大山が空戦競技部に入部して三週間が経ち、今日はミーティングのために部員全員と十条さんが部室に集められた。 わざとらしく咳払いしてから永田先輩は部室に集まった全員を見渡した。 「今日の議題は埼玉交流戦についてです。はい、これ一人一枚」 永田…
「終わりましたァ!」 「あ、おれも」 「ん、見して」 ほぼ同時に俺と大山はテストを解き終わり、解答用紙を土井さんに渡した。
体験搭乗の次の週、俺と大山は言われたとおり放課後に空戦競技部の部室にやって来た。 「お邪魔します……」 「いらっしゃい」 部室にいたのは土井さんだけで、ほかの先輩たちはまだ来ていないようだった。
「なぁ坂戸、お前もう入る部活は決めたのか?」 「いんや? そういうお前こそどうなんだよ」 俺と大山はキャンパスを二人並んで歩く。 入学から五日目、昨日から部活動の勧誘活動が解禁された学内は新歓ムードの熱気で春だというのに夏のように暑い。